2023年2月24日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『問わず語りの神田伯山』(毎週金 21:30-22:00)にて、講談師の神田伯山が、武藤敬司の引退試合で最後に蝶野正洋がリング上に上がったことで感動したと語っていた。
神田伯山:昭和のプロレスというか、武藤敬司の最後を見れてよかったなぁなんて思ったら、武藤さんがマイクをとるわけですよ。
で、「皆さん来ていただいてありがとうございました、1・2・3ダァーッみたいな感じで、猪木さんのあれで終わるのかな」と思ったら、そうじゃなくて。「いや、まだ俺、灰になってねぇな、もうちょとできそうだ」みたいなことを言ってんの。
「あれ?これ現役続行なの?」と思って、ちょっと「え?!」って思った時に、「やり残したことがある」と。「蝶野、俺と戦え。蝶野カモン!」って言うんですよ。そしたらさ、解説席にいた蝶野さんがさ、ガーンって抜かれるわけよ、大スクリーンに。
で、「蝶野、蝶野」じゃん。でももう、みんなファンも分かってるわ。武藤さん以上に蝶野さん満身創痍でレスリングなんかできないんですよ。で、できないんだけど、ああいう風に言われたからやっぱ、「囃されたら踊れ」だから俺たちは。
蝶野さんが格好良かったのがね、そのやっぱね、まっすぐ見つめながらヘッドセットをとるんですよ。その呼吸、たまんないわけ、それが。「やるん?!」っていう感じで。
それで、横にいる辻よしなりアナにポンポンって肩を叩いて、「お前が実況してくれ」って言うんですよ。で、散々、蝶野さんは「もう俺たちの時代は、古舘伊知郎の時代が終わっちゃって、もう実況だって昔のプロレスよりも劣化してんだから」みたいなことを言うわけ、冗談半分で。
でも、そんなこと言いながらも、やっぱこの時には、「辻、お前がやってくれ」って言うの。それがなんかグッとくるでしょ。で、辻さんは辻さんで、「じゃあ、僕が実況やっていいですか?」っつって。
そしたら武藤さんが今度は、「服部さん来てますか?服部さん」って。名レフェリーのタイガー服部ですよ、来てるんですよ、長州さんの横に。「服部さん、さばいてくださいよ」って。で、服部さんももう服部さんも苦笑いで上がってくる。
で、蝶野さんがまた、ファンタスティックシティって昔の曲が流れんですよ、入場曲。もうとんでもない盛り上がりだわ。で、レジェンドの武藤敬司と蝶野正洋が対峙する間に入るはタイガー服部ですよ。カーンって鳴るわけ。
で、蝶野さんが上着を脱ぐ、ドカーン、たまんないわけよ、その感じが。で、俺は俺でさ、もう25年前の蝶野さんと武藤さんが元気だった頃を思い出して、もうグーッと目頭が熱くなるみたいな感じでさ。で、2人が段々と対峙してるんですけども、蝶野さんがさ今までの解説席にいた顔じゃないんだ、レスラー蝶野正洋になってるわけ。
サングラス外して、あの蝶野の眼光ですよ。体動かない、腰も痛い、首も痛い。武藤さんも同じですよ、膝がどうにもならない。でも、2人は満身創痍の2人がリング上でガッてロックアップ、組つくわけ。
試合自体は1分半ぐらいとかそのぐらいで、STFで蝶野さんが武藤さんに勝って、武藤さんがトントンって叩いてギブアップっていう。まさにデビューの試合と引退試合が同じものになった。
これは多分、蝶野さんの引退試合でも実はある、みたいな。明言してないですけどね。なんかそのドラマを見せられた時に、やっぱ点だけで見てても分かんねぇものっていうのは世の中にいっぱいあるなっていう。
これは、この試合だけ見た人でも感動するかもしれないけど、やっぱ25年俺は見てるっていうのがある。途中、見てない時期もある。で、もっと見てる人もいるんですけど、その人たちからしたら、このドラマの凄さ、大河ドラマだって1年しかやってないですよ。
40年で、もう武藤さん現役生活39年っつってましたけど、39年かけてやってる大河ドラマなんだよね。その後も、レスラー引退してリングには上がんないでしょうけども、でもプロレスラーってやっぱ生涯プロレスラーだから続いていくみたいな。
なんちゅう面白いエンターテイメントというか、ジャンルなんだろうなって改めてちょっとグッときましたね。