2026年7月7日放送のニッポン放送系のラジオ番組『サカナクション山口一郎のオールナイトニッポン』にて、サカナクション・山口一郎が、『怪獣』はうつ病の経験がなかったら生まれていないと思っていると告白していた。
山口一郎:僕は、定型型うつ病っていううつ病で、ごく普通のうつ病なんですけど。ごく普通のうつ病でありながら、その症状を色々話していくと、心が塞ぎがちになったり、不安になったりするだけじゃなく、体の症状がめちゃくちゃあるわけですよ。
みんな朝眠くてさ、起きれないってあるよね。だけど、なんとなく起きてさ、スヌーズみたいなのを使って5分、10分みたいに伸ばしながらも、まぁ間に合うように起きていけるじゃん。
これね、うつ病になって身体的症状があると、本当に体が動かなくなるのよ。何て言うかね、ドラゴンボールで言うと、悟空がナメック星に行く時に重力マシーンみたいなのに乗っていくじゃん、宇宙船の。ブルマのお父さんが作ってくれたさ、鍛えるために重力が負荷を増していって、トレーニングして、重い重力の中でトレーニングすることで強くなるみたいな。
本当にあの状態みたいに、体がもう鉛のように重くなるんだよね。全身がっていうよりかは、俺は腕回りとか、肩周りとかがすっごい重くなって、首と頭の後ろの奥の方がズーンとして立ち上がれないみたいな。
で、本当にヒドかった時は、ご飯食べないと死んじゃうじゃん。けど、食欲もないから。でも食べなきゃ死んじゃうじゃん。だからUber頼むわけよ、何でもいいからおすすめの。で、Uber届くじゃん。でも取りに行けないのよ。それを繰り返して、下にどんどんUberが溜まっていっちゃうっていうようなことになってしまうぐらい、体が動かなくなってしまう。で、それにまた自分が何かこう情けなくなって、メンタルも病んでいくし。
ミュージシャンでうつ病になると、一番堪えるのは、やっぱり忘れられるっていう怖さをずっと抱えるんですよ。普段さ、活動していればさ、自分はSNSで投稿したり公式アカウントからいろんな情報発信したりとか動きがあるじゃない。でも動きがなくなるから、何にも発信がなくなるんですよ。
だから、もう別にサカナクション以外の音楽を聴き始めちゃったら、もう我々はどうにもならなくなっちゃうわけじゃない。だから、それが本当に怖くなるのよ。何かしなきゃいけないけど何もできないっていうことが、どんどん、どんどん追い詰められて、体の症状も激しくなるし、にっちもさっちもいかなくなるみたいなことになるんだよね。
でも、まぁ普通に病院に行って薬をもらったり、自分の中でいろんな取り組みをしたりとかして。ちょっとずつ良くなって、今こうやって復活できたんだけど。俺の中で一番大きな最近の失敗だと思うわけよ。
でも、『怪獣』って曲を書いたわけよ、うつ病の中で。サカナクションの初めてのアニメ主題歌だったんだけど。あの曲を…タイアップってさ、事前に来るわけよ。要するにみんながタイアップをやった時、発表になった時には、もう1年前ぐらいに実はもう進んでるの。1年だけじゃない、2年とかかな、前から進んでるわけよ。
で、俺はもう病気ど真ん中の時に、ビクターの山上さんと野村社長、ウチの社長ね…が、ウチにわざわざ来て、「一郎、こういう話があるんだけど」っていう風に持ってきたわけよ。で、タイアップにはS級、AAA級、AA級、A級、B級、C級みたいなのが、まぁあるわけよ。
その中でもS級だ、と。もう、これはもううつ病で、今、一郎はうつ病で辛いのは分かってるけど、「これはやった方がいいと思う?」って、あの優しい山上さんと、その数億円の(ツアー中止による)負債を被ってくれた野村さんが、「やんないか?」って持ってきたわけよ。
で、俺は正直そん時に「無理だ」と思ったのよ。何でかって言うと、抱えるっていうことが、つまりできなくなるからさ。何かこう締め切りがあるとか、「これをやらなきゃいけない」っていう状態が、自分の精神にどう働くかっていうのは、めちゃくちゃよく分かってたから。これ引き受けるって言った時点で悪化すると思ったのよ。
でも、これ引き受けないと「サカナクション終わる」って思ったんだよね。その野村さんや、山上さんや、マネージャー陣、自分たちと一蓮托生で人生かけてここまでやってきた仲間たち、メンバーも含めね、チームサカナのスタッフみんな裏切ることになるし、これで終わることになるなと思ったのよ。
だから、俺は「やります」って言って引き受けたんだよね。でも、できるかどうか分かんなかったの。その中で、YouTubeの配信を始めて、自分たちのドキュメンタリーを見せながら曲ができていくっていうストーリーを作っていって、実際に曲ができて。
で、その曲がサカナクション以来、初の大ヒット…自分で大ヒットっていうのも変か(笑)たくさんの人に聴いてもらえる機会になったし、今回、ミュージックアワードJAPANで最優秀楽曲賞、あと最優秀ロック楽曲賞、最優秀アニメ曲賞、あとそれ以外にも、最優秀ロックアーティスト賞、あとライブPA、ライブ照明、そしてジャケット、たくさんの…あとミュージックビデオ部門。それをあの『怪獣』一曲で受賞できたわけよ。
多分、俺、うつ病になってなかったら『怪獣』って曲できなかったんだよね。これは病院の先生にも言われたの。あの曲の歌詞を聴くと、見ると、「これは、いっくんが…」って、先生に「いっくん」って言われてんだけど(笑)いや本当に「いっくん」って言われてんだけど、男性ですよ、もちろん。
「いっくんが、苦しい思いをしてないと、たどり着けなかった歌詞だと思うよ」って言われた時に、俺、「失敗してよかったな」って思ったのよ。で、当時その瞬間、「失敗だ」って思ったことも、後から考えると成功だったり、自分にとって大事なものだったりするわけよ。


