2023年7月14日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『問わず語りの神田伯山』(毎週金 21:30-22:00)にて、講談師の神田伯山が、香川照之が実父・市川猿翁に俳優デビューを伝えに行ったときに「計り知れないショック」を受けたエピソードについて語っていた。
神田伯山:市川中車(香川照之)さんっていう役者さんが、そもそももうこれ歌舞伎ファンもみんな知ってますけど。先の猿之助さん。三代目猿之助の実の子供なんですね、浜木綿子との間に生まれた。
で、1歳の頃かなんかに、もうお父さん出てっちゃって、3歳で正式離婚で。その後ずっと、ほぼ会ってないと思うんですよ、今の市川中車さんこと、香川照之さんは。で、25歳かなんかで俳優デビューするって時に、意を決して実の親父である先の猿之助さんのところに挨拶に行ったんだよね。
で、それって子供心としたらさ、優しい言葉をかけて欲しいじゃないですか、常にさ。だって、「ああ、お前俳優デビューしたのか。じゃあ、頑張れよ」とかっていう言葉を多分期待して、多分、その20数年ぶりに実の親父に会いに行くっていう。
そのいわゆる歌舞伎の公演前に行った。そしたら、優しい言葉かけてくれるのかなと思ったら、猿之助が言ったのは、「君は配慮が足りない」と。「今、役者が舞台前で苛立ってる時に、何で来たんだ」っていう叱責から始まるんだよね。
それでもって、「君は結局…もう君のお母さんと離婚したところから、僕は蘇生したんだよ。僕の第二の人生は始まったんで、つまり君と僕とはもう親子じゃないんだ」と。
「僕は生まれ変わってるところから、歌舞伎役者の人生はまた始まってるから、君とは実の親でもなければ、子でもない」と。「二度と僕の前に顔を見せないでくれ」っていう ことをピシャンっていう風に言った時の、香川照之さんのショックってさ、なんかもう計り知れないじゃない。
で、そこで落ち込んでる時に、声をかけたのがこの前、猿之助さんのお父さんで、もう亡くなられちゃいましたけど、あの事件で。段四郎さんって方が、「いや、君はね…」っていう風に、優しく声をかけてくれたっていう。
それでもって、でも25で多分…俺の中で香川照之さんっていうのはどういう風に生きるかっていうと、多分、役者としてすげぇ大成して見返してやろうとしか多分思わないよね、そこでね。勝手な僕の推測ですよ。
そうした時に、自分の子供もできる。で、男の子だ、しかもってなった時に、その子を見ながら、「ちょっと待ってよ」と。「俺、歌舞伎役者だったら、この子だって歌舞伎役者で、おそらく猿之助って名前をずっと継いでいったのに、なんで俺、歌舞伎役者じゃないんだろう」って。
で、多分映画俳優としてどんどんどんどん認められて、香川照之って凄いとか。大河ドラマとかもいろんなところでさ、もう脇役からもうど真ん中の主役までやってさ、どんどん、どんどん自分の名声は高まってくけど、俺の予想ですよ、あくまで。でも、なんか多分満たされないんだよね。
なぜかっていうと、それは歌舞伎役者として認められてないからっていう。