神田伯山、尾崎世界観の小説『母影』を絶賛「尾崎世界観さんは本物の表現者…ニーズに全く関係ないことをやってるって奴が、やっぱなんか格好よくて」

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2021年2月19日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『問わず語りの神田伯山』(毎週金 21:30-22:00)にて、講談師の神田伯山が、尾崎世界観の小説『母影』を絶賛していた。

神田伯山:尾崎世界観さんの何が良いかっていうと、「本物の表現者だなぁ」と思ったっていうのは、尾崎さんのファンってさ、若い女性多いじゃない、きっと。

で、これがつまりどういう話かっていうとさ、カーテン1枚越しに、少女がいるんですよ。小学校3年か4年か分からない。で、お母さんが向こうで、何か仕事してる、と。で、お客さんが来るみたいな。

そこは、学校のクラスメイトがもう意地悪いから、「お前の母ちゃん変態マッサージやってんだろ」っていう、そういうマッサージをしてるんでしょう。

で、お客がカーテン越しだから声聞こえるんですよ。少女も聞いてるわけ。子供は何かそういう行為が行われている時に、凄くモヤモヤする、みたいなところ。まぁ、それをなんか多分描いてる。

でもそれってさ、別になんていうのかな、どこにもニーズないじゃん。で、尾崎世界観さんのお客さんも別に、そんな話をさ、喜ぶような人達ではないじゃん。

で、あまりにも文体が美しいし、その子どもの視点で描いてるっていう、それが凄く上手に描かれてるから、本当、どんどん引き寄せられちゃうから。その背景のテーマとかすっ飛んじゃって、この物語の中に入るし。尾崎さんのファンの人も大喜びで喜ぶと思うけど。

でも、題材自体は「変態マッサージを行ってる」みたいなのって、ちょっと引きかねないじゃん。でも、そういうお客とかどうでもよくて、「俺は表現としてこれを書きたいんだ」っていうね、何の配慮もないですよ、そこには。自分へのお客さんに対しても、ターゲット層という意味では配慮がなく、「俺はこれを書きたいんだ」っていう。

なんかね、表現みたいなことについてね、まぁ私も一応、講談師のはしくれですから。時代の変遷とともに、講談も徐々にチューニングを変えていかなきゃいけないって時にですね、なんかつまんなくただ寄せるんじゃなく、なんか自分の芯で言いたいところはここなんだ、みたいなところを、なんかこういう世の中、特に色んな映画でも何でも、希望とかさ、なんか嘘くせぇこと言って金稼ごうとしてる奴いっぱいいんじゃん。

でも、そんな薄っぺらいので評判を呼んだりして喜ばれたりもするし、それも事実だからいいけど、本当に表現者って、そういうところから外れてる気がすんだよね、なんか。

ニーズに全く関係ないことをやってるって奴が、やっぱなんか格好よくて。で、それが本当のニーズを生む、みたいなことを思ってるから。

いやぁ、なんか尾崎世界観さんちょっとあっぱれっていうか、素晴らしいまた次の階段が上がったなぁっていう。芥川賞候補にね、なって。賞自体とれなかったもしんないけど、いや、これは素晴らしい。僕は本当に最高峰の良いいうものを読んだなというふうに思います。

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