2024年6月10日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』(毎週月 25:00-27:00)にて、お笑い芸人・伊集院光が、心が温かくなる不思議な短編漫画集『さっちゃんとふくちゃんの五円玉』をおすすめしていた。
伊集院光:『さっちゃんとふくちゃんの五円玉』で、作者の方はドブリンという方です。出版社は青林工藝舎、ガロとかの関連のとこじゃないかな。で、43歳の女性漫画家、ドブリンさんの初単行本です。
リスナーメール:短編漫画集です。スージー甘金さんテイストのポップな絵柄のキャラクターが繰り広げる物語は、昭和の貧乏話や、たとえば障害を持ったお友達との関係や、おばあちゃんと小学生の主人公との交流が中心です。
かなりしょっぱい話にファンタジー的要素も加わり、読んでいてしゅんと切なく、いたたまれないような気持ちになりながらも、段々温かい感情が湧いてくる不思議な漫画集です。
伊集院光:ってことなんだけど。テーマは、やっぱりちょっと暗いテイスト凄い入ってんだけど、ことさら暗いわけでもなく、絵柄がとにかく持ってかれる絵柄だから。そのバランスがめちゃくちゃ良くて。
で、長く書いてくれたんですけど、ネタバレをしないまま、一番僕がおすめポイントと してグッときたのは、帯が杉作J太郎さんで、「たまらないほど孤独な夜に是非読んでください。読むと寂しくなくなる、ほっかほっかのドブリンマンガ」って書いてあるのね。
なんか僕の中で、杉作J太郎さんが勧めるっていうのは間違いがないっていうか。もし違えば、俺の自己責任だっていう感じが凄いして。で、短編でこれ絵で見るともっと百倍面白いから、「こういう短編が入ってるんです」っていうやつで。
表題作の「さっちゃんとふくちゃんの5円玉」なんだけど。なんか事情があって、おばあちゃんと暮らしてるさっちゃんとふちゃんで、お金は相当ないお家。そこで、二人は凄く楽しむことの天才だから、たとえば新聞にチラシがいっぱい入ってた時代なんで、その新聞のチラシが楽しみで、そのチラシの裏が白いチラシにも絵が描けるっていうことを凄い楽しんでたりとか。
あとは、たとえばピザ屋さんの広告が入ってくると、美味しそうだって話を延々として。とることはないんだよね、あんまお金がないし、ましてやおばあちゃんの家だから、ピザなんてハイカラのものをとることはないんだけど。
マンションの間取りが来ると、「こういうマンションの部屋にみんなで住みたい」みたいな話をしてるけど、まぁまぁお金がない、その明るさみたいのがいいんだけど。
そしたらなんかおばあちゃんが帰ってきて、おばあちゃんが5円お小遣いをくれるんだよね。で、おばあちゃんが「何でも買っといで」って言うと、この時代は5円もう何も買えないんだよね。で、駄菓子屋さんでけんもほろろな扱いを受けて、帰ってきて。で、おばあちゃんに「どうしたの?何も買わなかったの?」って言うと、「もったいないから買わなかったんだ、欲しいもんがなかったんだ」なんて言うわけ。
で、さっちゃんとふくちゃんは、それでももう明るく遊んでる中で、新しい遊びを思いついて。そのもらった五円玉に、アラビアのりっていう、透明の液状のチューブに入った、卓上にポンと置いとけるようなのりで、五円玉置いて上にそのアラビアのりをかけて置いとくと、5円玉の複製が、透明な5円玉ができて、あれを作っては、お金持ちになった想像をする、5円玉がどんどん増えるっていう想像をずっとしていくっていう遊びをして。
「これを何回やったらマンションが買えるんだろう」みたいな話をしてるわけ、さっちゃんとふくちゃんで一緒にしてるわけ。で、そこにまた多分稼ぎに行ってんだろうね、仕事をしに行ってんだろうね。ばあちゃんが帰ってきて、「何やってんの?」って言ったら、「5円玉いっぱい作って、お金持ちになってマンションに住むの」っつって。
で、最後「おばあちゃんと、さっちゃん、ふくちゃんの3人で住むんだ」って。で、最後のコマが「誰だい?ふくちゃんて」っていう(笑)
「…えっ?」っていう(笑)「急に?」っていう話なんだけど、でもこれが怖いとかそういうんじゃなくて、切ないんだよね。この子の遊びの工夫は、高々チラシ1枚でも、明るく遊べるっていう遊びの工夫は、俺らが思ってる何倍も凄くて。
一人でお家にいる時に、兄弟を作るっていう工夫だったり。このレベルの短編がいっぱい入ってんの。