博多大吉、芸人を志望したきっかけ
矢作兼:そういう人からすると、本当に大吉さんとかは憧れの存在だと思うんですよ。放送作家っていう手もあるとは思うんですけどね。ブサイクではないんですけど、控えめなんですよね。大吉さんは、どうして芸人になろうと思ったんですか?」
博多大吉:僕は、大学で華丸が「芸人になる」っていうから、その話に入れてくれよって言って、芸人になったんですよ。
矢作兼:大学の時にはイケてなくなかったんですか?
博多華丸:そんなことなかったですよ。(自分より)先に彼女作ってましたよ。
博多大吉:大学デビューしたんです。高校までは、泥水を啜っているような生活でしたよ。僕は、肌が汚かったんですよ。ニキビに苦しめられて、将来的には本当にブラマヨの吉田さんみたいになるよって言われてたんです。でも、大学に入って、奇跡的になんですけど、全部綺麗になったんです。高校卒業が3月で、大学入学が4月でしょ。その1ヶ月足らずで、綺麗に治ったんです。
矢作兼:ストレスだったんだ。
博多大吉:今考えたら、そうだったのかも知れませんね。何を使ってもダメだったんです。でも、高校卒業した瞬間に、全部綺麗になったんです。そこから、自信を持った、じゃないですけど、モテた時期があったんです。
矢作兼:顔は悪くないですしね。
博多大吉:背も、バスケットを辞めてから伸び出したんです。
矢作兼:学校の生活がイヤだったんですね。ストレスで。
博多大吉:それで、大学で落語研究会に入って、そこで、華丸さんと出会ったんですよ。中高でなんの未来もないように思ってましたけど、卒業した瞬間、道が拓けたんです。
矢作兼:分からないもんだね。高校卒業した途端にってね。
博多大吉:いつ拓けるか分からないですよ。高校卒業したときなのか、社会人になってからなのか。僕は、ずっと同じような人生が続くと思ってましたけどね。でも、全然違いますね。高校時代と。おぎやはぎは、僕と同じような人生を送っていると思ったんですけどね。でも、全然違うんですよね。高校時代もモテてたっていうし。
矢作兼:たしかに、全然違いますね。…芸人になるのも、きっかけは出会いということもありますよね。
博多大吉:そうですね。それで、華丸は最初、たけし軍団に入りたいって言ってて。たけしさんが大好きで。たけしさんがダメだったら、タモリさんの知り合いが福岡にいる、ってことで、そのツテを辿って芸人になるって、ドンドン決めていくわけですよ。
博多大吉:だけど、その頃はバブルで、就職案内とかは2 mくらい積み上がってたんです。引く手あまたで。文系の僕にも、1 mくらい来てたんです。
博多華丸:でも、1年生の頃ですからね。4年生の頃には弾けてますから。
矢作兼:大学は卒業したんですか?
博多華丸:いや、中退。
矢作兼:どうしてなんですかね?大学を中退した人って、売れるんですかね。たけしさんとか、タモリさんのイメージがデカイんですけど。
博多大吉:福岡吉本が厳しくて、学生との両立がダメだったんです。「大学に行くなら、大学に帰れ、アホ」って言われてたんです。
博多華丸:本当は、大学を辞めてまでとか、東京に出てまで、芸人をやるつもりは無かったんです。芸人にはなりたかったけど。それで、たまたま福岡に吉本が来て、「お迎えが来た」って言ってましたけどね。そうでなかったら、芸人やってなかったかも知れない。
お笑いめんたいこ出場、吉本興業入り
博多華丸:僕らも、芸人になりたくて、第一回「お笑いめんたいこ」に出場したんですよ。
矢作兼:「お笑いめんたいこ」って…ネーミングセンスが最低だな。
博多華丸:塙くんの弟、ナイツのボケをやっている塙くんも、第三回「お笑いめんたいこ」で優勝しているんですよね。
矢作兼:え?そんな昔?
博多大吉:第三回ですよ。高校生の頃に、「お笑いめんたいこ」で優勝しているんです。
小木博明:お、すげぇ。
博多大吉:高校生の頃からやっているんですよ。それで、第二回の「お笑いめんたいこ」で一次予選敗退したのが、ロンブーの淳くんなんですよ。第二回は、全九州でやっているんです。司会をダウンタウンさんがやってましたからね。
小木博明:え?
博多華丸:そのころは、もの凄かったんですよね。第二回のことです。
矢作兼:司会、ダウンタウンさん?
博多大吉:俺らの頃は、全39組くらいでしたけど、そこから1,000組以上がエントリーしてたんです。全部見れないから、書類選考とかがあったんです。その中に、淳くんが入ってた、というのを後から聞きましたよ。
カンニング竹山:オーディションの決勝戦だ。華丸大吉とかと一緒に出た。
赤江珠緒:うん。
カンニング竹山:それがそうですよね。テレビで、客がブワーっていて。
赤江珠緒:はい。
カンニング竹山:そうですよ。それが初日ですよね、人生の。
赤江珠緒:その時の景色とか、ありありと覚えてらっしゃいます?
カンニング竹山:いや、自分からのお客さん目線はもう覚えてないね。後に、映像で見た絵しか記憶にないよね。
赤江珠緒:ああ。
カンニング竹山:だから、もう覚えてないなぁ。
赤江珠緒:その時の感触とか、「上手くいった」とかっていうのはどうですか?
カンニング竹山:感触は、当時は勝手に上手く行ったと思ってるんだけど、人前で漫才みたいなことをやって、ウケた経験がないから。少しでも笑ってたら、ウケたと思っちゃってるね、当時は。
赤江珠緒:ああ。
カンニング竹山:今は、ある程度ワーって笑っても、「これ、ウケてねぇな、スベってるな」って自分で分かる。本当にウケたことを知ってるから。
赤江珠緒:うん。
カンニング竹山:多分、そういうアマチュアの考えだと思いますよ。
赤江珠緒:へぇ。
カンニング竹山:はっきりとは覚えてないよね。
赤江珠緒:そうか、そうか。
カンニング竹山:ただ、華丸・大吉よりウケたんですよ。
赤江珠緒:はっはっはっ(笑)
カンニング竹山:当時ね。僕は18歳、華大が19歳。
赤江珠緒:はい(笑)
カンニング竹山:でも、震えてたなぁ、一緒に(笑)ブルブルと震えてたなぁ、華大と。
赤江珠緒:皆さんがね、今、「たまむすび」でやっていただいているという、色んな御縁ですね。
カンニング竹山、博多華丸・大吉と一緒に立った初めての舞台の思い出「ブルブルと震えてたなぁ、華大と」
福岡吉本時代の滅茶苦茶な指導
岡村隆史:玉利(たまり)って、元さんまさんのマネージャーで、福岡事務所に行かはって。そっから、福岡事務所から異動になって、ヨットハーバーで一般人の人とケンカになって、消息不明になってるんですよ。
今、多分、どこに行ったか分からへんのですよね。分からへんっていうか、消息不明になってるんですけど。その個人事務所に、大吉君がなるって(笑)
元々、福岡事務所の時に、さんまさんについてはったから、物凄い厳しかったみたいで。その時も、突然、夜中に電話かかってきて。寝てるじゃないですか。でも、電話かかってきたから出るじゃないですか。ほんなら、玉利さんって人が「お前、寝てたな?」って。
「はい、寝てました」「なんで寝れんねん!さんまさんは、寝てへんで24時間!ずっとお笑いのこと考えてるで」って言うて。そんなテストばっかりされてたんですって。その人が最終的にヨットハーバーに行って、それでその後、消息不明になってるんですけど。
岡村隆史、博多大吉が福岡時代に干された玉利所長の仕打ちを暴露「突然、夜中に電話かかってきて…」
博多大吉:最初、吉本入った時、やらされたやん。「電波のないラジオ」っていうね、トレーニングがあるんですよ(笑)
博多華丸:ふふ(笑)
博多大吉:今もあんのかな?分からないけど。
博多華丸:マイクね、簡易的なマイク。
博多大吉:もう、もちろんダミーですよ。工作で作ったようなマイクを真ん中に置いて、「よし、じゃあ今日はお前とお前」って。まぁ、全員合わせても、福岡吉本の5~6人くらいしかいないですけど、2人選ばれて。架空のラジオ番組をやらされるんですよ。
博多華丸:はい、「電波のないラジオ」っていうタイトルで。
博多大吉:で、それを30分ぐらい喋らされて、汗だくになって喋って喋って、終わった後に「オモンないねん!」ってどやされるっていう地獄(笑)
博多華丸:はっはっはっ(笑)地獄やった(笑)いや、よう辞めんやったよね、あの時、本当。
博多大吉:そう。「ハガキとかきてる体(てい)でやんねん。大阪、みんなそうやってうまなんねん」って言われて。「はい、はい…」とか言って、一生懸命(笑)「ハガキが届いてますよ」とか言って(笑)
博多華丸:そう。架空の。
博多大吉:稽古場だけでやってた、非公開。完全非公開のやつ。
博多華丸:そうです、そうです。
博多大吉:やってたね。
博多華丸:はい。で、「お前ら、お客さんもいないからおもんないやろ」って、ナンパさせられに行ったよね。
博多大吉:そう、そう。
博多華丸:「連れてこい」と。その辺歩いてる女の子を。
博多大吉:事務所の稽古場まで連れてきなさい、と(笑)
博多華丸:で、女の子がいると…
博多大吉:リアクションっていうかね、反応が分かるじゃないですか。だから、電波のないラジオもそうやって始まって、最終的には女の子を連れてきて、客席っていうか、椅子並べてそこに座ってもらって、僕らがしゃべって。
博多華丸:そうですよ。
博多大吉:やってましたけど。
博多華丸:いや、でもどうやって連れてきます?「電波のないラジオ、聞きませんか?」って。とんちやもん。一休さんの世界やもん。
博多華丸:ふふ(笑)
博多大吉:「何をおっしゃってるんですか?」って話じゃない(笑)
博多華丸:そう。
博多大吉:それでも、必死で連れてきてね。
博多華丸:そう。
博多大吉:で、ワーッてやるんですけど、結局、その社員さんが終わって、その女の子と飲みに行くっていうね(笑)
博多華丸:そう。
博多大吉:それを見送るっていう。もう訳のわからん、コンプライアンスのコの字もなかった時代ですよね。
博多華丸:本当、そうでしたね。
博多大吉、福岡よしもと時代に練習させられた地獄の「電波のないラジオ」を語る「汗だくになって喋って、どやされる」
福岡吉本の所長交代
博多大吉:大まかな話で言うと、初代の所長は「芸人としてお前たち頑張れ」と。
小杉竜一:はい。
博多大吉:「漫才やるなら、漫才をしっかりやれ。絶対に漫才で頑張れ」って所長だったんですよ。次の所長が、「漫才なんていりまへんで」って所長なんです。
吉田敬:なんでよ。
博多大吉:「博多弁の漫才なんか、えぇですわ。あんたら、タレントでっしゃろ?」と。
小杉竜一:「どこにニーズがありまんの?」みたいな。
博多大吉:そうそう。だから所長さんがきて、それまでは博多華丸・大吉で仕事してたけど、そこからはバラ売りが始まるんですよ。
小杉竜一:それまでコンビネーションとか作ってきたのに。
博多大吉:「完全に潰されるな」って思いましたよ。
小杉竜一:自分の事務所の所長に(笑)完全に潰されるなって(笑)
自宅待機を命じられ、一年間干されていた
博多大吉:97年くらいですけど…テレビ局の方と僕は打ち合わせが普通に出来るんですよ。ですけど、テレビ局の人は、所長さんと正常に打ち合わせができないんですよ。お互いに悪感情が入り乱れてるから。
小杉竜一:えぇ。
博多大吉:僕は頻繁に、テレビ局の人と企画打ち合わせとかしてたんですよ。当時は、構成作家の方もいらっしゃらないので、自分でやってて。
小杉竜一:えぇ。
博多大吉:それで、番組の中の企画で、「一年間くらい海外いきますか?」みたいな感じになって、「とりあえず、僕が行きますか?メインMCが行った方が派手でいいんじゃないですか?」って。それを番組内で発表したんですよ。
小杉竜一:面白そう。
博多大吉:そのオンエアを見てた所長が、「寝耳に水」やと。報告が一切いってなかったから、史上最大の揉めっぷりをみせて、結果的に、人気を誇った番組、打ち切り。
小杉竜一:えぇ!?
博多大吉:アメリカに行くって言った僕は、「とにかく、一回、家におれ」と。
小杉竜一:何その指示(笑)
博多大吉:だから、僕、一年間、自宅待機してるんです。26歳の時。
吉田敬:一年ですか?
博多大吉:結果的に、一年で。
小杉竜一:「番組終わったから、アメリカ行きませんでした」って言って活動しても良いですもんね。
博多大吉:でも、「いい機会だから。博多華丸・大吉がずっとMCをやってたんで、若いやつに変えてみようか」と。
小杉竜一:はい。
漫才のネタ作りを作り始めた大吉
博多大吉:でもね、その1年が結果的にムダじゃなかったんですよ。
小杉竜一:なんで?
博多大吉:やること無いから、僕が漫才のネタを作りだすんです。
小杉竜一:復帰の時にやろう、と。
博多大吉:というのも、それまでは僕の当時の考えでは、「漫才はボケが作るもの」だと。だってスベった時に損するのはボケだから、そこはツッコミが手を出してはいけないところだから、全て指示に従おう、と。それを上手にやれるように頑張るのがツッコミだと思ってたんです。
小杉竜一:はい。
博多大吉:でも、「復帰できたときに漫才やるやろうから、ネタでも作ってみるか」っていうことで作りだしたんです。
吉田敬:暇つぶしくらいの感覚で?
博多大吉:そうそう。その一年で、僕はずっとネタを作ってて、華丸さんはラジオDJやってたり、ピンのローカルタレントの仕事をしてたから、漫才師としての記憶を失ってるんです。
小杉竜一:ふふ(笑)
吉田敬:記憶が(笑)
博多大吉:だから、復帰して最初のイベントの時に、(自分が作ったネタを)恥ずかしいから見せられないんですよ。
小杉竜一:あぁ。
博多大吉:自信があるけど、華丸に「ネタどうする?作った?」って訊いたら、ホントあっけらかんと「作り方が分からんもんね」って(笑)
小杉竜一:清々しいなぁ(笑)
博多大吉:「それやったら、書いてきたけど」って、見せたんです。
小杉竜一:その時は、どんな感じでした?
博多大吉:それがね、傑作たい。
小杉竜一:はっはっはっ(笑)
博多大吉:NHKのオンエアバトルに呼ばれるようになるんですけど、そこで、1年自宅待機してたときに作ってたネタで、合格するんです。
小杉竜一:はい。
博多大吉:結構、負けなしなんです。
小杉竜一:そんなイメージでしたよ、見てたとき。
「じゃない方芸人」から「アメトーーク」でブレイク
小木博明:売れたきっかけの話をして。大吉さんは、「アメトーーク」の「中学の時イケてない芸人」の、あそこからだって言ってたもんね。
矢作兼:最初に、華丸さんが出てきてすぐR1獲って。それでモノマネがあるから。アタックチャンスとか分かりやすいから、ガッって行ったの。
小木博明:華丸さんが売れたの。
矢作兼:それで、華丸さんが行って、大吉さんは「じゃない方」だったんだよね。
小木博明:そう。話聞いてたら、切なかったよ、最初の方はね。華丸さんが賞を獲って売れて。それで、番組は華丸さんが欲しいんだろうね。
矢作兼:うん。
小木博明:そこで、華丸・大吉さんで呼ばれて。なのに、大吉さんには、ピンマイクがついてないっていう。
矢作兼:うん。そんなことすんだよね。
小木博明:そんなこと、あり得るのかって。「しゃべっちゃいけない」みたいな感じだもんね。だから、ずっと黙ってたって。
矢作兼:そうだね。
小木博明:華丸さんには、赤文字で「アタックチャンス」のカンペが出てるとか。
矢作兼:うん。それも、その一言だけとかね。そういう風に、最初ってピンポイントで使われるんだね。
小木博明:うん。それで大吉さんはどこからって話になったら、まさに「中学生の時イケてない芸人」の時だって。
矢作兼:最初のきっかけは…
小木博明:マネージャーのミスとかがあって。本当は呼ばれてて、アンケートをもらってたんだよね。
矢作兼:うん。
小木博明:そしたら、大吉さんのスタイリストがなんかが、「アメトーーク」の女性のプロデューサーさんと、どっかの仕事で会って。「そういえば、大吉さんからアンケート全然きてないんですよ」ってなって。
矢作兼:うん。
小木博明:それで、そのスタイリストから大吉さんに「アンケートがきてないって催促されました」みたいな。
矢作兼:うん。
小木博明:「え?知らないよ?」ってなって。そしたら、期日から1週間超えてた。
矢作兼:ああ。
小木博明:「ちょっと、待て待て。ヤバイじゃないか」って。
矢作兼:マネージャーの連絡ミスだね。
小木博明:それで、「今から間に合うのか?」って話になったら、「まだ大丈夫ですよ」ってところから、あまりにも失礼なことしたし、ちょっと取り返そうとして、いつも以上に凄い頑張ってアンケートを書いたって。
矢作兼:テキトーに書かないで、4枚くらいに書いたって。
小木博明:そう。普段はそんなにやらないんだけど、その時はあまりにも「申し訳ない」って気持ちで、4枚くらいにビッシリ書いたって。
矢作兼:うん。そしたら、それが引っかかって。
小木博明:そっからブレイクしてね。
矢作兼:大吉さんも面白い、みたいなね。みんな華丸さんに目が向いてたけど、大吉さんも面白いんじゃないかってね。