爆笑問題の太田光さんが、音楽・文学・落語などのモラルを逸脱した部分の面白さと、その一方でメディア出演が可能かどうかの基準という別問題について語っていました。
タレントを続けられる≠テレビ・ラジオに出られる
太田光:裕也さんの今回、死んじゃった話なんかを聞いてるとさ、それこそ瀧なんか可愛いもんでさ、めっちゃくちゃやってるわけだよね。
伊集院光:だからそうするとね、「あなた、どこまで出たいんですか?」って。
太田光:そう、そこなんだよな。
伊集院光:そういう話だと思うのね。なんか、前に誰かのスキャンダルのときに、太田さんがいいこと言ってて。
太田光:うん。
伊集院光:「お笑いを続けることは可能だよ」って。それは寄席でもなんでも可能だが、じゃあ、その視聴者の人とかが許さないモラルのところ、ましてや法律を破った人が、テレビやラジオに出れるかって問題はまた別の話っていうのがあって。
太田光:うん。
伊集院光:それはなんか、芸能の中でも枠は色々あると思うんだよね。
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大衆の基準に常に合わせてきた太田
太田光:だから、ピエール出す/出さない、電気グルーヴの音楽を配信する、しないみたいなのを宮台さんかなんかが署名を集めてやってたけど。
田中裕二:うん。
太田光:これは個人の考え方ですよ。だけど、日本の芸能界で…だから、ぜんじろうは世界の芸能界にいるんだから、「そんなの関係ねぇよ」って言えば、それはそれでいいんですよ。
田中裕二:うん。
太田光:ただ、俺は日本のテレビが好きだし、未だにね。
田中裕二:うん。
太田光:そんなに悪いもんだとも思ってないし、外国かぶれが批判するようなね。
田中裕二:うん。
太田光:日本の大衆の基準。「ここまでがOK」っていう基準に、常に合わせてきたんですよ。
田中裕二:うん。
太田光:だって、俺たちは大衆芸能なんだから。
田中裕二:うん、うん。
太田光:だから、大衆の基準に、特にテレビっつーのは、それがもちろんね、倫理観っていうのは増してますよ。
田中裕二:うん。
太田光:「ここまでOK」っていうのはどんどん、厳しくなってますよ。
田中裕二:うん。
太田光:それでもやっぱり、その大衆にウケるっていうのが、俺のやっぱり…ポリシーって言ったら大げさだけど。
田中裕二:うん。
太田光:テレビ芸人、テレビタレントとしてのね、やるべきことだと思うし。
田中裕二:まぁまぁね。
太田光:そこでハネられたら終わりだよ、それは。
田中裕二:うん。
太田光:だから、電気グルーヴにしても、大衆が拒否したら終わり。
田中裕二:うん。
太田光:もう、それを判断するのは大衆でしかないし、今後、電気グルーヴの音楽がね、大衆にはウケていくんでしょ?当然。
田中裕二:うん。
太田光:だったら、それはそのように、レコード会社も判断するはずだしね。
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道徳的なもの≠芸術的に優れた作品
太田光:その辺が難しいところで。道徳的な表現が人を感動させるってわけでもないんでね。
田中裕二:うん。
太田光:たとえば太宰治であったり、三島由紀夫だったり、教科書に載るような人は、学校で命の大切さを教えるために、そういう小説やなんかも載るんだけど、その人たちは最期どうだったかって言うと、みんな自殺してたりするわけで。
田中裕二:うん。
太田光:太宰なんて心中未遂何回もして、人間としてはどうしょうもないわけで。
田中裕二:うん。
太田光:そういう人の表現がやっぱり心を打ったり、生きる希望を人に与えたり。
田中裕二:うん。
太田光:逆に言えば、破滅に導いたりもするって。それは別に、引き離せないんだよね。
田中裕二:うん。
太田光:その芸術っていうのは、悪い面と良い面と。どうしても引き離そうとするけども。
田中裕二:うん、うん。
太田光:同時にあるからこそ優れた芸術であって。
田中裕二:うん。
太田光:だから、そこは同じ場所で善と悪はあるというか。善と悪って考え方自体が、誰にとっての善なのかってことで変わってくるんだけど。
田中裕二:うん。
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音楽や落語は「罪があるからこそ面白い」
太田光:談志師匠なんか、最期、テレビなんか出れなかったじゃないですか。
田中裕二:うん。
太田光:俺はだから、談志師匠に言ったんですよ。「テレビに出れるようにしてください」って。「古典やれば出れるじゃないですか」って。
田中裕二:うん。
太田光:だけど、師匠は師匠で舞台ってものがあって、古典ってものと格闘してたから。
田中裕二:うん。
太田光:あのレベルの人の考えてることは分からないけれども。
田中裕二:うん。
太田光:ただ、俺はもったいないなって思った。
田中裕二:うん。
太田光:それは、日本の大衆が、あるいは日本のマスコミが立川談志ってものの凄さと、普通に放送できない倫理的な部分っていうものの…実は、立川談志師匠が普段枕で言うようなことはね、それは放送に乗せられないこといっぱい言うんです。
田中裕二:うん。
太田光:でも、実はそれ以上に、倫理的に罪深いネタっていうのは、古典の中でいくらでもあるんです。
田中裕二:いっぱいあるわけね。
太田光:それは芸術として、大衆は受け入れちゃうんですよ。
田中裕二:うん。
太田光:それは分からないから。そこが古典の凄さなんです。
田中裕二:うん。
太田光:よく、坂本龍一教授がね、「音楽に罪はない」って言うけど、私に言わせりゃ冗談じゃないですよ。
田中裕二:うん。
太田光:音楽に罪があるからこそ面白いんだよ。
田中裕二:うん。
太田光:不道徳に導く音楽なんか、いっぱいありますから。
田中裕二:うん。
太田光:で、太宰治が「あんなの作品に罪はない」って言えますか?罪だらけですよ、あんなものは。『人間失格』なんて。だから、そんな単純な話ではないんですよ、実は。
田中裕二:うん。