2025年7月7日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』(毎週月 25:00-27:00)にて、お笑い芸人・伊集院光が、映画『国宝』を鑑賞して高すぎる前評判のハードルを超えることはできなかったと感じた理由について語っていた。
伊集院光:深夜放送の打率だから、何人か「俺も実はそうだった」って言ってくれればそれでいい。それ以外の人は、まぁある程度「え?」っていう。「お前、なんかよくわかんねぇな」ってなるかもしんないけど。
『国宝』っていう映画が、凄い巷で評判で。3時間あるけど全く感じない、と。で、いろんなタレントさんとかも、「この何年か見た映画の中で最高だ」っつって。それこそ明日会うけど、佐久間さんとかも『国宝』面白いって言ってたし、あと俺に『教皇選挙』を教えてくれたNHKのプロデューサーも、「『国宝』めちゃくちゃ面白い」って言ってて。
それで、ちょっとハードル上がりすぎたのかも。そもそもえらい早くに、ウチの若手スタッフの瓶底眼鏡君が、「『国宝』、すっごい面白かったんです」って言ってて、で、そのタイミングはまだそこだったんだけど、あれよあれよという間にめちゃめちゃ評判で、「これは…」みたいな感じになってって。
で、カミさんも和歌山で「とにかく『国宝』見た子がめちゃくちゃ面白いって言うから。私も3時間の映画、ちょっとアレだけど、見に行こうかしら」って言うから、「じゃあ、一緒に行こうか」っつって、見に行ったんだけど。
あの…そうでもなかった。俺だけかもしんない。本当に、これはでも自分でちょっと分析はできてんのは、俺、歌舞伎好きだから。だから、実際出てくる歌舞伎の演目も全部分かるし。
で、そういう人に向けて作ってないからウケるんだと思う。別に、歌舞伎役者の人がどう思うのかを凄い知りたいんだけど。なんかその歌舞伎っていうものの凄さを分からせるために、誇張とは言わないけど、分かりやすくしたシーンがいっぱい出てくるし、演技が めちゃくちゃ上手い。演技がみんなめちゃくちゃ上手いから、それだけでも凄いし。
「歌舞伎っていう世界って、こんななの?」っていうショッキングさとかも凄いんだけど。その辺はある程度分かるっていうことの中に…ある程度よ、もちろん。別に、これは誤解なく言っとくけど、つまらなかったことは全然ない。で、入場料の意味もあったし、3時間見ても別にしんどくもない。だからそれでは凄いんだけど、みんなが会う人、会う人全員が面白いと言っていることがちょっと信じられなくて。
中に、「いや、実はそうでもなかったんだけども」って、言える雰囲気じゃないのよ。もう映画館自体の混み方とかも。実はそこまでではなかったんだけどっていう人、いるはずなんだけどなと思ってんだ。
ただ、おそらくそう言われて行って、で、もう本当に夜まで3時間の映画で、あんなに座席が埋まっててっていうところで、これを言うと、物の分かってない人になる空気は物凄い。
だけど、俺は言い訳してんのは、俺は物が分かってないんじゃないんだよ。むしろ歌舞伎が好きだから、みたいなの言ってるぐらい勇気がいるっていうか。なんつったらいいのかな、歌舞伎大好きだと、歌舞伎の音楽のところにオーケストラが乗ってくんのとかちょっと邪魔なんだ。「いらないじゃん」って思っちゃう、それは本当に大事なことで。
よく言うんだけど、ラジオを舞台にした映画って、ラジオ好きな人とかラジオ関わってる人は、あんま入ってこないんだよ。「そうはしない」って。だけど、そこをある程度分かってもらえるようにしなきゃ大ヒットもしないし、逆に言えばあれだけの人が「面白い、面白い」ってならないと思うんだけど。
なんか多分、あれだけAVの好みの合わない瓶ちゃんが、瓶ちゃんだけが俺に言ってた時に見に行ってたら、そんなにでもなかったと思う。おそらく、「瓶ちゃんにしては気ぃ合うじゃん」っていう。


