三遊亭円楽、弟子・伊集院光との対談で語った数々の金言まとめ

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処世術とは知恵、人に好かれること


伊集院光:師匠以外の人から聞いた伝説で。歌丸師匠、多分、その頃はおタバコを吸われてて、缶ピースを吸ってらっしゃったんです。

三遊亭円楽:そう、そう。

伊集院光:その缶ピースがなくなる。最後の1本が切れた時に、「買ってこい」って言っても、すぐに缶ピースって売ってないの。ましてやコンビニもないし。

三遊亭円楽:うん。

伊集院光:そうするとね、「ありませんでした」って言うの。

吉井歌奈子:ああ。

伊集院光:でも、その当時の前座の楽太郎だけは、ダッシュでまずピースを確保して、「缶ピースはすぐに手に入りませんが、こちらは味が似ておりますから、こちらで繋いでおいてください」って言って、もう一回、駆けていくっていう。

三遊亭円楽:あとは、買っておく。

伊集院光:持ってるんですよ。

吉井歌奈子:在庫を抱えて、いつでも。

伊集院光:それがね、ズルいんですよ。

三遊亭円楽:ズルくないよ。なんだ、そのズルいって言い方は。処世術と言いなさい。

伊集院光:ふふ(笑)俺らは、言っちゃうのよ。「在庫、持ってます。持ってます」って言うんだけど、さり気なく出すっていう(笑)

三遊亭円楽:それも、出し方が「在庫持ってます」じゃないの。「言って参ります」って言って、外で5分くらい時計を見て、タバコ屋に行ったふりをして、鈴本(上野鈴本演芸場)の階段をダッシュして、「行って参りました」って。

伊集院光:ズルいでしょ?そういうの全部、考えるんだから。

吉井歌奈子:いやぁ、勉強になります。

三遊亭円楽:だって、構成作家だもん。

伊集院光:ふふ(笑)元々、構成作家の走りなんですよね。

三遊亭円楽:だから、自分を構成し、相手にどう見せるかっていう。大事ですよ。

伊集院光:ええ。だから、その当時、他の気の利かない前座がどんどんクビになるっていう(笑)逆に言えば、水準が上がるから。

三遊亭円楽:それでウチの師匠がね、「楽太郎、あの4人辞めさせといてくれ」って言うんだよ。困るよ。

伊集院光:先代が(笑)

三遊亭円楽:俺がね、人事権を持ってるみたいなんだよ(笑)

伊集院光:その後、ちょっと笑っちゃったのが、僕らは当時の楽太郎、当代・円楽の弟子になるでしょ?

吉井歌奈子:はい。

伊集院光:そうすると、僕ら前座で小間使いなのよ。さらに、先代の円楽師匠は、たとえばコピー。俺らの頃、もう手軽になってて、10円でコピーできるのに、「楽太郎しかできないんだ、アレは」って言って。「コピーを1枚とりたいから、楽太郎を呼んで来い」ってなるのよ。

吉井歌奈子:へぇ。

三遊亭円楽:刷り込み。

伊集院光:ふふ(笑)

吉井歌奈子:そうやって全幅の信頼を勝ち取っていってってことなんですね。

三遊亭円楽:だから、処世術っていうのは何かって言ったら、知恵ですよ。人に好かれること。

伊集院光:はい。

三遊亭円楽:上の引き立て。それしかない。

伊集院光、三遊亭円楽が師匠に気に入られるために行った伝説的な処世術を語る「他の前座がどんどんクビに」

処世術とは、どこの堀を埋めておくか

三遊亭円楽:でも、よく(『大沢悠里のゆうゆうワイド』の枠を)乗っ取ったよな。

伊集院光:はっはっはっ(笑)そういうことを言わないでくださいよ(笑)

三遊亭円楽:その下から回していく力。”深夜の馬鹿力”というか、大したもんだ。そういう処世術をね、私がみんな教えた。

伊集院光:そうなんですよ(笑)

三遊亭円楽:空きそうなところがあったら、先に裏から回って、スタッフに、あるいはスポンサーに唾を付けておけよ、と。

伊集院光:師匠、それで歌丸師匠と仲良いんですよね?

三遊亭円楽:仲良い、仲良い。それからサントリー、龍角散ね。

伊集院光:はっはっはっ(笑)

三遊亭円楽:それから日本香堂。私がなんかあった時に、降ろされそうになったこと、何回かあるの。

伊集院光:あ、そうですか?

三遊亭円楽:その時に、サントリーの昔の杉村専務やなんかが、「あの子は降ろしたらいかん」ってこれだよ、一言。

伊集院光:そのやり方を教えていただけますか?

三遊亭円楽:(腕をパンパンと鳴らす)

伊集院光:腕、パンパン鳴らしてますけど(笑)僕、落語はもういいんで、そのやり方を教えていただけますか(笑)

三遊亭円楽:処世術っていうのは、どこの堀を埋めておくかっていう。自分が入っていく堀を埋めておけば。あとは、忍者になることだね。

伊集院光:忍者?

三遊亭円楽:草と一緒でね、ずーっと耐えて、耐えてね。いつかパッとね転覆をさせるんだ。

吉井歌奈子:隠れて、様子を伺うんですね。

三遊亭円楽:そう、そう。それであちこちに種を仕込んでおいてね。

伊集院光:あのね、ヨイショじゃないんですけどね…

三遊亭円楽:ヨイショはダメ。その場過ぎだから。

伊集院光:バレるんですよ。これがバレるんですよ。

三遊亭円楽:仕込みというのはね、十分な仕込みをしておけばね、後でね、芽が生えるんだよ。

吉井歌奈子:人間観察力が凄い必要ですね。

伊集院光、師匠・三遊亭円楽に学んだ処世術「処世術っていうのは、どこの堀を埋めておくか」

悩んだ時に「との字の発想」

三遊亭円楽:「と」というのは、まさに足し算だから。接点だから。

吉井歌奈子:はい。

三遊亭円楽:私、よく言うの。「ちょっと悩んだ時に、『と』の字を入れてごらん。見えてくるから」って。

吉井歌奈子:ああ。

三遊亭円楽:たとえば、今回の大震災でも「自分と熊本」とか。あるいは、「自分と師匠」とか。「自分とラジオ」「自分と仕事」「自分と食事」…って、みんな繋がってくるでしょ?

伊集院光:うん。

三遊亭円楽:「と」の字っていうのは、「足す」だから。どんどんどんどん、自分とゲートボールと若手と学校と地域と…って足してけば、何か見えてくるでしょ?全部、足し算でいける。そこから要らないものを今度は引き算すればいいんだから。

伊集院光:はい。

三遊亭円楽:残ったのが、自分に必要な要素だよ。

伊集院光:なるほど、足せるだけ足して、「これは手に負えない」ってヤツは引けば。

三遊亭円楽:そう、そう。邪魔なものは外す。

伊集院光:それができる最高の形になるっていう。

三遊亭円楽:設計図が出来上がるから。

伊集院光:今度、インタビューかなんかで、この番組名の由来を訊かれたら、それパクっていいですか?

吉井歌奈子:はっはっはっ(笑)

三遊亭円楽:ああ、いいよ。

伊集院光:あんまり考えずに付けちゃったもんですから。

三遊亭円楽:僕、講演でも言ってんの。「との字の発想」っていうのは。

伊集院光:へぇ。

三遊亭円楽:「自分とお寺」「自分と○○」って。そうすると、「関係ないよ」って言えなくなってくる。

吉井歌奈子:ええ。

三遊亭円楽:「自分と学校」「自分と両親」「自分とラジオ」って考えれば、「との字」が入るだけで見えてくるよって。

吉井歌奈子:さすが師匠ですね。良い由来ができましたね(笑)

三遊亭円楽、自分との関係を整理して悩みを解決するための方法をアドバイス「との字の発想」

弟子の育て方

伊集院光:僕は、都合のいいことばっか覚えてるんですけど。当時、寄席若竹ってあって、円楽一門の弟子は全部、(先代の三遊亭円楽に)「ヒマがあったら、一分でもそこに行け」って言われてたの。

三遊亭円楽:はい、はい。

伊集院光:それで、みんなそこで凄い働いてたんだけど、ある日、師匠が「たしかに、苦労は芸の肥やしだけれども、肥やしをあげ過ぎた花は、それはそれで枯れるからね」って言って、「自分で塩梅を決めて、自分のしたいこともしなさい」ってことを言われて。

三遊亭円楽:いつも思うんだけど、根腐れしちゃうんですよ。

吉井歌奈子:ああ。

三遊亭円楽:それからね、プレッシャーかけると潰れるの。やっぱり、芽が出たところで肥やしをあげなきゃ、育たないのよ。芽が出てないのに、肥やしあげてもしょうがないの。

吉井歌奈子:ああ。

三遊亭円楽:教育の原理っていうのは、それでしょ?

吉井歌奈子:ええ。

三遊亭円楽:やっぱり、プレッシャーをかけるんじゃなくて、伸び盛りの時に、パっと田仕舞してやりゃ、キュッと伸びんのよ。

伊集院光、落語家時代に三遊亭円楽師匠からかけられた言葉「苦労は芸の肥やし。だけど、肥やしをあげ過ぎた花は枯れる」

自分が受けた嫌なことを弟子には強いない理由

伊集院光:謎なところは、今、スポーツ界でも何でも、一番つき当たってるところって、めちゃくちゃなところで育つわけじゃないですか。スパルタでも何でも、育つでしょ?

三遊亭円楽:はい。

伊集院光:そうすると、その人はそれで実績を上げたら、そのめちゃくちゃなことを次に教えるのが、むしろ普通じゃないですか。で、ある意味、その前の円楽師匠の、ある意味めちゃくちゃな。感覚的な教え方で、自分はそれなりに出てきたわけだから、そうすると俺らに対しても、そうなって普通なのに。

三遊亭円楽:うん。

伊集院光:たとえば、よく「苦労は買ってでもしろ。芸の肥やし」って言うけど、「無駄に苦労しちゃダメ。で、肥やしやりすぎると、菊枯れるじゃん」って言うのね。

中村仁美:はっはっはっ(笑)

伊集院光:「だからお前、今日映画でも見てこいよ」っていう。そんな鞄持ちなんかいないのよ、他には。他にはいないんだけど、あの切り替えは。あの世代間の切り替えは、なんでできるんですか?

三遊亭円楽:それは、ウチの師匠が間違ってたから。
伊集院光:間違ってるっていう。でも、一番従ったのは師匠じゃないですか、そのめちゃくちゃに。

三遊亭円楽:そうよ。だから、それはやってて、私は横でもって他のこともやってたから。

伊集院光:ああ。

三遊亭円楽:自分の時間で。それはそれでちゃんとやってる。面従腹背をしていて、腹の中で違うこともやってたから。

中村仁美:へぇ。

三遊亭円楽:それはそうだよ。全て正しいわけないもん。談志・円楽が全部正しいわけないじゃない。

三遊亭円楽、伊集院光ら弟子たちにスパルタ教育を行わなかった理由を告白「それは、ウチの師匠(先代円楽)が間違ってたから」

師匠たちから学んだこと

三遊亭円楽:談志師匠とか、ウチの師匠とか、歌丸師匠から学ぶことはただ一つなんです。落語が好きか嫌いかって。やり方は違うけども、談志も円楽も歌丸も、みんな落語が好きなの。

伊集院光:うん。

三遊亭円楽:そして、落語界のことを考えてる。そして、落語界に対するアプローチ、外へ対するアプローチ。その方法が違ってただけ。理想は一つなんだよ。落語という一番の大神様に対して、尊敬をしてるわけ。

伊集院光:凄かったですよね。この番組に出ていただく。で、ネタになりそうだってことで、師匠と歌丸師匠に二人会を見に行った時に、幕が開く寸前まで鼻にチューブ入って、車椅子で。開いた途端に、何の問題もなく落語をやって、閉まっていく。壮絶な、「なに?この落語の決死隊」みたいな感じ。

三遊亭円楽:そう、そう。

伊集院光:ああいうものの教えてくれることは、師匠も多いですか?

三遊亭円楽:ねぇ。

伊集院光:歌丸師匠のああいう姿を見て、思うところって、いっぱいあるんですか?

三遊亭円楽:だから…歌丸師匠は、不器用なんですよ。ウチの師匠なんてのは、遊びがまだまだ、麻雀だとか、なんだとか息抜きあったでしょ。歌丸師匠は、何の息抜きもないわけ。

伊集院光:はい。

三遊亭円楽:そうすると、落語をやる。そしてね、自分がそれまでスポットを浴びてなかった若手の時分から、いわゆる談志・円楽・志ん朝という、同期の連中たちに、古典落語で遅れをとった。その悔しさが生き残ったことによって、全部出て。よくなったんだよ。

三遊亭円楽、桂歌丸が亡くなる間際で落語の腕が格段に上達した理由を語る「談志・円楽・志ん朝への悔しさが全部出て」

落語はなくていい商売だからこそ…

三遊亭円楽:そしてね、一番の教えはね、晩年のウチの師匠の教えだね。

伊集院光:はい。

三遊亭円楽:「いいか、お前。今は映画もあるしね、娯楽といったらね、何をしようと思ってもね、いくらでもあるんだよ。だからな、落語なんてのは、なくてもいい商売なんだ。なくてもいい商売なんだから、悟られるんじゃねぇぞ」って言ったのよ。

伊集院光:ああ。

三遊亭円楽: これは名言だね。世の中、なくたっていいものって、いっぱいあるわけですよ、考えたら。

伊集院光:はい、はい。

三遊亭円楽:ですけど、それを悟られないで、「やっぱり聴きたい、面白い」って部分をちゃんと前へ出してって、お客さん引っ張ってくりゃいいんだよ、と。だから、それだけ詐術を含めて、騙せるだけの技術をつけなさい、そしてバリューを持ちなさい、と。

伊集院光:うん。

三遊亭円楽:だから俺は、正月言ったように、うーん、もっと上手くなりたい。

三遊亭円楽、先代の五代目円楽から教えられた「落語はなくていい商売」という言葉の意味を語る「それを悟られるんじゃねぇぞ」

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